511 LC直列回路f特 参考実験
本実験では$ Lと$ Cだけで構成された回路の周波数特性を観測する.
※$ LCと$ LCRは外部$ Rが無いが,$ Lには交流抵抗$ r′が生じるから実質同じである
☆☆ 注意 ☆☆
この実験を参考にするなら,なんのためにやるのかを明確に.
https://gyazo.com/04395c35cba312a1cd47dbe9068fb041
図521.1直列共振回路の周波数特性測定回路
■主題:
$ L,Cの直列回路に正弦波を入力し,電圧の変化と位相の変化を観測する.
周波数を幅広く変化させ,急激に変化する様子を捉える.
$ Q_0, F_0, \Delta f等を計測する.
■測定条件:
※以下の条件値はあくまでも参考値.なぜこの値なのかは要検討.
入力信号:サイン波,分かりやすい$ v_1電圧
※ほしいのは「電圧比」 → $ v_2/v_1が計算しやすいよう,$ v_1を$ 0.25, \;0.5, \;1.0 V_{p-p}など,分母として分かりやすい電位になるように,信号発生器の出力電圧(AMP)を調整する
※一般的に入力電圧が高いほうが測定精度は良くなる(はず)ことに留意
測定周波数(目安):$ 2~60kHz程度($ Lの値に依存:班毎に異なる)
回路素子:
$ Zマッチング抵抗:直列39$ \Omegaと並列10$ \Omega,
※なぜ直列にも接続するのか? ← 考えなさい
コンデンサ$ C:$ 1000pF ← $ RC回路実験と同じもの
インダクタンス$ L:未知
※共振周波数$ f_0と$ Cより求める.参考値がアルミシャシに記載
■測定/算出すべき値:
(1)入力電圧$ v_1,出力電圧$ v_2を実測
※$ v_1は理論上一定だが,共振の影響を受けて$ f_0付近で変化するので注意!
(2)共振時最大振幅比=$ Q_{0(a)}を実測
(3)振幅比の共振周波数$ f_{0(a)}
(4)位相遅れ$ x測定 ⇒ 位相差$ Pを算出
⇒ 位相差の共振周波数$ f_{0(p)}を探索
※$ f_{0(p)}:位相遅れ$ =-90\degreeとなる周波数
(5)$ Q_{0(a)},\;f_{0(a)}から$ \Delta f_{(e)}算出推定
⇒ $ \;f_{1(e)},\;f_{2(e)}算出推定
(6)半値周波数: $ f_{1(m)},$ f_{2(m)}実測 ⇒ $ \Delta f_{(m)}算出
(7)半値全幅$ \Delta f_{(m)}⇒$ Q_{0(m)}算出
https://gyazo.com/a5df6a60fbfb45b7a4ea5498a658d663
図521.2 直列共振回路の周波数特性(横軸対数)
https://gyazo.com/44d1dbcd1864d17b1024f0d85e75d37f
図521.3 半値全幅$ \Delta f:$ f_0近辺拡大図(縦横正方眼)
◆準備・留意事項・作業のヒント
準備注意(1)オシロスコープの校正は必須.
準備注意(2)詳細な測定の前に,FGの発振周波数を幅広く変化させ,電圧の変化と位相の変化を大まかに観測し,周波数特性の全体像を把握する.特徴点を簡単にメモしておく.
(1)2kHz付近からスイープし始める.最初は1kHz単位で粗く.
※スイープ(sweep):周波数を連続的に変化させる
(2)激しく変化する周波数域を見つけたら,変化単位を細かくする.
(3)波形に変化が始まるのはいつか?
※実際のデータ記録はその少し手前から
(4)電圧$ v_2が最大$ v_1の何倍程度大きくなるか.
(5)最大振幅の後,$ v_1に対する$ v_2の位相がどの程度変化するか.
※最大位相変化量は理論$ -180\degree だが実際にはそうはならない
(6)$ v_2の値が小さくなり測定困難になるのはいつか.
準備注意(3)計測は周波数ごとに電圧$ v_1と$ v_2の振幅値と位相差を計測する.
ただし振幅と位相は別に計測してもよい.
準備注意(4):振幅の計測のコツ.
振幅はサイン波ゆえに頂点を捉えにくい.
こういう場合は水平方向を縮めて信号を帯のようにして読み取る.
視認でも確認した後,オシロスコープのカーソル機能を使う.
準備注意(5)位相差の計測・グラフ化はやや間接的.
(1)$ v_1に対する$ v_2の時間ズレ(位相遅れ)を計測,
(2)そこから位相差(度)を算出,
(3)それをプロットする.
準備注意(6)位相ずれは2本の波のゼロクロス点での時差$ xを読む.下図521.4参照.
※ゼロクロス:信号がGNDを横切る点
★注意(6-1)2つの信号のGND輝線を一致させておくこと.
縦方向のレンジを調整するとGNDの位置が変化することに注意.
★注意(6-2)縦方向(電圧)のスケールを上げて波を立てる.
精密に読むために時間軸を拡大すると波は横に寝てきてゼロクロス点が読みにくくなる.
波がより垂直に近くなるとずれを読み取りやすい.
準備注意(7)位相ずれから位相差の角度を算出するには次式を当てはめる.
$ P = 360 \times f \times x
※(P:位相差,f:周波数,x:位相ずれ)
準備注意(8)振幅・位相差測定手順:
このように振幅比と位相差は数値の見方が異なるので,同じ周波数であってもオシロスコープを都度操作する手間がかかる.
振幅と位相差を測定する手順としては,
(1)振幅だけを全部測定してから位相差を測定する方法と,
(2)周波数毎にオシロを操作して両方を計測するやり方がある.
◆推奨するのは(2)の方法.理由:縦方向の操作は必要だが,周波数変更を必要最小限にする方が誤差も少なく,ミスがあってもデータを取り直しやすい
準備注意(9)プロットのコツ:
データを取りながら計算をし,グラフにプロットする.
測定――計算――プロットを一連の流れにして,なるべくリアルタイムにプロットするのがコツ.
※全データを取った後にミスを発見したら修正が厄介
https://gyazo.com/a82ffb15bb7478eb71bc4ef9c6e63026
図521.4 位相ずれ$ xと位相差$ \thetaの関係
【実習課題521】($ LC回路の周波数特性測定)
手順(1)広い周波数範囲の中から振幅比v/vが最大になる周波数を見つけ,それを実測値$ f_{0(a)}とする.この際,$ v_1の変化に注意.
※$ v_2の急激な変化の影響を受けて$ v_1が変化する可能性
手順(2)周波数特性における最大電圧比は$ Q_0値に等しいので,$ f_{0(a)}での最大電圧比を$ Q_{0(a)}とする.
手順(3)位相差$ -90\degree になる周波数を見つけ,それを実測値$ f_{0(p)}とする.
※$ f_{0(a)}と$ f_{0(p)}はほぼ同値のはず
手順(4)後の手順のために,$ Q_{0(a)}と$ f_{0(a})を使って半値幅推定値$ \Delta f_{(e)}を算出する.さらにその半値幅における$ f_{1},f_{2}の推定値$ f_{1(e)},f_{2(e)}を算出する.
※(e)はestimationのe
$ f_{1(e)},$ f_{2(e)}については,$ f_{0(a)}を$ \Delta f(e)の中央値と仮定すれば容易に導ける
手順(5)準備で見当を付けた範囲で周波数を変化させる.
周波数毎に振幅比$ v_2 / v_1を計算し,片対数方眼紙にプロットする.
※$ v_1がちょうど$ 1.0Vだったら$ v_2の値だけでよい ← 1.0Vに調整する理由
回路の特性がよくわかるように,測定点をよく考えながら測定を進める.
※一定間隔で測定するのは非効率・不正確につながる
※周波数によって$ v_1が変化する可能性があるので注意
手順(6)位相を観測する.
$ v_1に対する$ v_2の遅れxを測定し,そこから位相差Pを算出,片対数方眼紙にプロットする.
※共振は非常に鋭い.変化のある部分(立上がり前後,$ f_0付近,立下り前後)をより詳しく測定する
以下の特徴点を見つけること.
1.位相差0度から変化しはじめる”離陸”点
2.位相差-90度になる周波数$ f_{0(p)}
3.位相差が一番下がる点(-170度~-176度程度)
※両チャネルのGNDの輝線をぴったり画面中央の横軸に合わせること.
※位相差の測定⇒算出⇒プロットを同時並行的に行うこと.
手順(7)半値全幅と比帯域を求める.
共振曲線に対して半値全幅の帯域をなす$ f_{1(m)}と$ f_{2(m)}をオシロスコープで見つけ,その差を$ \Delta f(m)とする.
※(m)はmeasurement
$ f_0付近は読み取りにくい.対数グラフとは別に,$ f_1~f_0~f_2付近をクローズアップして正方眼紙にプロットする.
※対数グラフとペアにすることでグラフの表現力も上がる
※現実的にはこちらを先にやると対数グラフは楽に描ける
グラフには,上記で求めた3つの推定値$ \Delta f_{(e)},$ f_{1(e)},$ f_{2(e)}も記入しておく.
【検討課題521-1】($ Q_{0(m)}の算出)
settings.icon 上記で得られた$ \Delta f_{(m)}と$ f_{0(a)}を比帯域の634.3式(634 直列共振回路の周波数特性理論)に代入して$ Qを求め,これを$ Q_{0(m)}とせよ. 【検討課題521-2】(任意課題)$ Q値をコントロールする方法)
本実験では$ f_0値,$ Q_0値を固定のものとして扱ったが,これらを意図的に動かせるといろいろ便利であろう.そこで,
settings.icon 本実験の回路を変更し,意図的に$ Q値を動かせるようにしてほしい.
考えうるところまででよいので,具体的にしっかり考えること.
1. 本回路の何をどう変更するのかを明示する.
※例:ラジオチューナ同期周波数を変更する,イコライザで特定の周波数を強調する,等
※$ Q_0,$ f_0の計算要素は何か?それらのうち,パラメータ要素は?
★パラメータとは,他の要素の影響で変化せず,独立的・意図的に変化しうる要素
2. 変更点によって何が変化するのか示す.
※たとえば$ Q_0,$ f_0の変化量がどうなる
3. 必要な素子の種類と値を具体的に考え,実際の製品を提示する.
※おおよその価格まで調べられると完璧!
【検討課題521-3】(任意課題)共振エネルギーの謎)
共振時,$ Lに蓄えられている磁界のエネルギーと$ Cに蓄えられている電界のエネルギーは,この交流電圧・電流の半周期毎に$ Lと$ Cの間を交互に移動しているだけで,抵抗におけるジュール損失のように$ Lまたは$ Cにおいて熱になって失われるものはない.
settings.icon このことを分かり易く説明せよ.
★Hint★大きな規模の回路で考えてみる
発電機から送電線を経由して交流を送り,電気機器を稼働させるとする.
◎この大きな回路では電気機器,特にモーターなどの誘導電動機は$ Lとして働く.
◎これに電気を与える発電機は$ C的に働く.
このように$ Lと$ C間でエネルギーのやり取りがあると,送電線を行き来する際に送電線の抵抗およびインピーダンスのためにジュール熱が発生し,電力損失となる.
このように機器と発電機との間を1周期毎に往復して消費される電気エネルギー成分を無効電力という.
以上.
2024/4/8